ある本によると、介護職員にとって大変な利用者様は
「体重の重い人」「性格の悪い人」だそうです。
新しい方の入居が決まると職員もドキドキです。
A様は、長年連れ添った奥様が急に入院され
ホームに急遽入居することになりました。
入居された日娘さんから
娘様「お父さん。お母さんが入院している間ここでご飯を
食べたりお風呂に入ったりして頑張ってよ」
A様「ああ‥」
娘様「ひとりじゃご飯作れないでしょう」
A様、ベッドに横になりただ黙っています。
淋しいのか、気分も沈んでいるようです。
ヘルパーもそっと見守りしていました。
日が経つにつれ介助に伺う事が多くなりました。
いつも食事が済むと、皆様が集まるホールにお誘いしても
行きたがらず、すぐに居室に戻りベッドに横になられます。
或る日ヘルパー室にA様が座っています。
ヘルパー「はい、4×6は?」
A様「24」
ヘルパー「8×8は?」
A様「64」
ヘルパー「忘れていませんね。正解です!」
大人の脳トレドリルをやっていました。
昔事務の仕事をされ計算は得意だったとの事です。
A様「あれ(奥様)が強くてしっかりしていたから何もしなかったんだよ」
ヘルパー「奥様は厳しいですか?」
A様「厳しいよ。オレはいつも命令されているよ。
スーパーへ行ってこれ買って来て。あれ買って来てって」
職員皆笑ってしまいました。
ヘルパー「あら、どこの家でもお父さんはそうですよ」
A様「そうかい。オレは自分で何も出来ないから、ここでお世話になるよ」
何だかしおらしいお姿に職員も奥様が退院される日まで
しっかりお世話して差し上げなければという気持ちになりました。
入居者様と職員、お互い心を寄せて行くにはそれなりの時間がかかります。
ご縁があってホームに来られる方。一つ屋根の下に住む家族のように、いつも思いやる人となれるよう願っています。